東京高等裁判所 昭和45年(行ケ)116号 判決
事実及び理由
一、請求原因一、二、三項の事実については、当事者間に争いがない。
二、原告は審決が本願考案における二つの角部を外側方に突曲させた構成が第二引用例の角部を外方に突曲させた構成と実質的に均等で公知であるとした判断が誤りであると主張するので、この点について検討する。
(一)、成立に争いのない甲第四号証の一・二(本願明細書)によると、つぎのように認められる。
本願考案は角形の建築材を磨き上げた状態で運搬する場合などに使用する保護板であつて、溝形の二つの角部が外側方に突曲している構成によつて、建築材の角部に他物が衝突した場合、この突曲部が変形して外力を分散吸収し、さらに側板部分の広面積の弾性を介して衝撃が緩和され、内方の建築材に局部的に外力が直接加わらないことにより建築材の保護を確実にするとともに、広巾の建築材に対しても両側板部分の挾着力によつて容易に取付けられる作用効果を有する。
(二)、ところで成立に争いのない甲第六号証(第二引用例)、乙第二号証の一、二、三および弁論の全趣旨を総合すると、第二引用例の波形スレート用丸形角当は既に固定された建築物の隅柱を被覆するためにその二面に釘着するもので、角当のU字形突曲部によつて隅柱の一つの角部を被覆し、角当のU字形突曲部に連なる両側縁部2・2の上に波形スレート6・6を被せてゆくものであり、その目的とするところは、隅柱の外面を完全に被覆して腐蝕を防止し、水切溝3・3により雨水の屋内への侵入を防ぐとともに、U字形突曲部の形成により、スレート波形壁板の突出部に調子をあわせ建築物全体の外観としてスレート板の波形と丸形角当が一体につりあつた美的効果をも備えて、スレート建築物の価値を高めるものであることが認められる。甲第六号証によつてもU字形突曲部がとりたてて隅柱の腐蝕防止のために設けられているものとは認められない。しかも乙第二号証の一、二、三によれば石綿スレートのJIS規格において石綿の配合量を多くして曲げ強さ、耐衝撃性にすぐれているものを特にフレキシブル板として形状による一般のスレートの類別の外に規格づけしていることが認められるので、単にスレートというにとどまる第二引用例の角当の素材は、フレキシブルな性質をもたない一般のスレート板をさすものとするのが相当である。したがつて、同引用例の角部の突曲に本願考案におけるような外力に対する緩衝性、両側板部間の挾着力の付与という技術思想が示唆されているということはできない。
また第二引用例は建築物の角部を形成する隅柱の一つの角部のみに着目して、これを被覆し、隅柱角部の両側縁部と連続する壁面の形成をはかるものであつて、隅柱の二つの角部が同時に建物の角部として突出されることを前提としていないから、隅柱の二つの角部のそれぞれをU字形突曲部で被覆するような実施態様は考えられない。
(三)、そうしてみると、本願考案における二つの角部を外側方に突曲させた構成と第二引用例の角部を外方に突曲させた構成とは、建築材の保護という広範な概念では共通し、角部に外方突曲部を形成する外観上の一致はあるものの、具体的な使用の技術分野、目的、使用態様、作用効果において全く相違するものといえよう。
(四)、ちなみに成立に争いない乙第一号証には、荷造用紐の締めつけにより生ずる被包装物角部の損傷を防止するための保護板が示されているに過ぎず、また同じく成立に争いのない乙第三、四号証を検討してみても、ばねもしくはスプリングそれ自体の弾性確保のために屈曲部における一つまたは対称的に二つの突出部を形成することが示されているにすぎず、いずれも本願考案のように、被包装物に対する外力による衝撃を緩和する技術を示すものでないから、これらの技術が周知であるとしても、前記認定を左右するものではない。
三、そうすると審決には原告の主張するような判断の誤りがあり、違法であつて取消されねばならない。よつて原告の本訴請求を正当として認容する。